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最高裁判所第三小法廷 昭和33年(あ)929号 決定 1958年7月22日

主文

本件上告を棄却する。

理由

被告人及び弁護人諏訪栄次郎の上告趣意は、法令違反、事実誤認、量刑不当の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない〔原判決が買い入れたアルコールに水を加えて活性炭素で濾過する操作を加えたものでも焼酎の製造に当ると判示し、また必ずしも甲類乙類を確定する必要はない旨判示したことは所論のとおりである。そしてアルコールに水を加えて濾過しただけでは酒税法三条六号の焼酎の定義にあたらないから、原判決前半の判示は当を得ていないが、酒税法四三条三項は一定のアルコールに水を加えた場合を焼酎の製造とみなしており、本件はまさにこれに当るから、結局原判決はこの規定の適用を遺脱したに過ぎず、この誤りは判決に影響しないというべきである。また焼酎の製造について原料アルコールの製造工程が判明しないためにその甲類、乙類を確定できないとき罰金額の算定上この確定を必要としない場合は原判決の説明のとおりであるし、罰金額の算定上この確定を必要とするときは、被告人に最も利益な酒税の少い焼酎乙類として取り扱うことを妨げるものではない(明治三六年一月一三日大審院判決・刑録九輯一八頁参照)。所論は、焼酎甲類、乙類を確定できない場合には焼酎の製造といえないと主張するが、所論のとおりとすれば本件は酒税法三条一一号にいう雑酒の製造をしたことになり、酒税法五四条の適用上酒税が高率であるために罰金額が増加できることになり、自ら不利益な主張をするに過ぎないことになる。〕。また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 垂水克己)

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